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本気でペットを守りたい人のためのコラム

※トピックス"9"以降はPC版で読めます


【バックナンバー】

9.果物・野菜が命を脅かす?

8.「てんかんの薬」の話

7.意味のない感染症検査

6.耳の病気(綿棒グリグリ)

5.3年に1回!混合ワクチン

4.エサはどうやって選ぶ?

3.今この時期にかゆい!なぜ?

2.老犬老猫冬注意!

1.もうやめて!愛情=おやつ


◎果物・野菜が命を脅かす?

「アナフィラキシー」って言葉、

聞いたことありますか?


4つあるアレルギーの型の

ひとつで、

「即時型アレルギー」

のことです。


即時型アレルギーは、

「アレルゲン(原因物質)に

暴露後、数分から数時間以内

に起きる急性のアレルギー」

のことです。


日本アレルギー学会の

2014アナフィラキシー

ガイドラインによると、

「アレルゲン等の侵入により、

複数臓器に全身性にアレルギー

症状が惹起され、生命に危機

を与え得る過敏反応」

とあります。


人では「小麦などを食べた後

の運動」が引き起こす

運動誘発性アナフィラキシー

も知られており、必ずしも

原因物質に「暴露した直後」

と言うわけでもありません。


軽症の場合は、熱感、顔の腫

れ、かゆみなどですみますが、

重症化すると、喉の奥まで腫

れる喉頭浮腫気管支収縮

どによる呼吸困難、

末梢血管の拡張による循環不全

(アナフィラキシーショック)

を起こし、死に至ることもある

重篤な状態です。


人であれば、

アナフィラキシーショックは

「3次救急」

抗ヒスタミン剤やステロイド

の投与、エピネフリンなどの

カテコールアミンの投与、

循環を維持するための輸液、

呼吸困難があれば気管挿管、

喉頭浮腫があれば気管切開等

が行われ、救命処置が施され

ます。


アナフィラキシーショックから

救命後も、その後の臓器不全

(腎不全など)にも十分な

注意が必要となります。


話を本題に戻します。


以前より何度かホームページ

や看板などで紹介しています

が、今回は、

OAS(口腔アレルギー症候群)

の話です。


簡単に言うと、「花粉アレル

ギーを持つペットが、特定の

野菜・果物を食べて起こす

アレルギー」。

人だけじゃなく、ペットでも

起こると言われています。


アレルギーで起こる抗原抗体

反応は「鍵と鍵穴」の関係。


アレルゲン(抗原)が鍵に

あたりますが、ぴったり合う

鍵じゃなくても、鍵穴にはまっ

てしまい、アレルギーの扉が

開いてしまうことを

「交差反応」と言うんです。


日本ほぼ全土に「ハンノキ」

という植物があって、その花

粉症は一般的です。


「ハンノキ」アレルギーがあ

るペットが

「リンゴ・梨・イチゴ・セロ

リ・ニンジンなど」を食べると、

「交差反応」によって、アレ

ルギーを起こすことがあるの

が分かっています。


口腔アレルギー症候群(OAS)

とか

花粉・食物アレルギー症候群

(PFAS)といいます。


症状は、軽症から重症まで

様々ですが、摂取後、短時間

で症状が現れた場合には、重症

化することがあるので、十分な

注意が必要です。

もし、アナフィラキシーが起

こった場合は、様子をみるこ

となく、迅速に、設備・人員

の整った病院を受診すべきです。

ショック状態に陥ってからで

は間に合いません。


予防策としては、

ご自身のペットが

アレルギー体質である場合、

OASに対する知識を深め、

原因になりえる食材は回避

することです。


人の食物アレルギーでは、

どれくらい食べるとアレルギー

を起こすかを調べる「負荷試験」

を行いますが、負荷試験で

事故が起きているのも事実。


ペットの場合、原材料が明記

されている処方食も販売され

ているので、敢えて、そんな

危険をおかす必要はないでし

ょう。


なにげなく与える

野菜、果物、などの食材が

「アレルギー体質のペット」

にとっては、

”命を脅かす可能性がある”

という事実を知って下さい。


最近は、「成型したおやつ」

例えば、

板状にしたソフトジャーキー、

スティック状のおやつに野菜

が練りこんであるものが多く

出回っています。


何が入っているか分からない

ものは、特に十分な注意が必

要です。

原材料表示をきちんと確認す

るよう心がけましょう。


実際、そのようなおやつを食

べた後、アレルギーと思われ

る症状(蕁麻疹、かゆみ、下

痢、嘔吐)で来院するペット

は少なくありません。


アレルギー体質のペットを飼

っている方は、

「OAS」「PFAS」

で検索し、

理解を深めて下さい。


当院では、カウンセリング

(有料)も行っています。

回避すべき食材の資料もご用

意しておりますので、是非、

ご利用下さい。


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◎てんかん発作って毎日

薬飲まないとダメ?

自分のペットが「発作」を

起こした姿を目の当たりにす

ると、あまりの恐ろしさに、

気が動転してしまう飼主さん

がほとんどだと思います。


そのため、病院で毎日2回の

抗てんかん薬投与を指示され

ると、

「そういうものなのか。

じゃあ、仕方ないな・・」と、

すぐに投薬を始めるケースが

多いのではないでしょうか。


1度でも発作が起きたら、

すぐ「抗てんかん薬」の治療

を始めなければいけないのか、

それについて考えてみます。


まず、「てんかん」の発作って

どのようなものか。


@背骨を伸ばすように体を弓

なりに反らせて全身がガタガ

タと痙攣する「全般性発作」


A顔の半分だけ、体の半分だ

けが痙攣したり、一部分が

ピクピクひきつる「部分発作」

この2つがありますが、

部分発作→全般性発作に

なることもあります。

自分のペットが気を失ったり

麻痺したり、震えたりして、

明らかにおかしいが、

「てんかん」かどうか分から

ない場合は、


@動物を広い平らなところに

移して、床に頭をうちつけな

いように頭の下に手を添える。


A呼吸を妨げない、誤嚥させ

ないために横に寝かせる

(抱きかかえたり、頭を高く

しない)。


Bてんかんの発作ならば、

1〜2分でおさまることも多

いので、3分は待つ。


Cもし、3分経っても

おさまらなかった場合は、

動物病院に行く準備をする。


D−1 準備をしているうちに

おさまれば、呼吸をしている

ことを確認後、病院に電話し、

指示を仰ぐ。


D−2 おさまらなければ、

電話連絡→動物病院へ向かう。


ここから、薬の話です。

 ↓ ↓ ↓ ↓

結論から言えば、

「飲まないよりは、飲んだ方

が安全」です。


ただし、それにはいくつか

条件があります。


@発作の原因がにあり、

進行性で取り除けないことが

MRIなどで確定している場合


Aであり、血液検査などで

発作を起こす原因が脳以外に

見つけられない場合


B原因が何であれ、

12週〜16週に1回の頻度

以上で発作がきてしまう場合


C原因が脳にあり、1度でも

発作の"重積"や"群発"を

起こしたことがある場合


※"重積"は5分以上の発作、

または発作と発作の間に

意識回復しない連続発作。


※"群発"は発作と発作の間に

意識回復するが、1日に何度

も発作が来ること。


なんだか、難しいですね。


てんかんは大きく分けると、

頭蓋内に原因がある」と

頭蓋外に原因がある」です。


もっと細かく分けることも

できますが、まず大分類です。


頭蓋内」は脳の異常や、脳の

異常と思われるがMRIなど

でも原因が分からないもの。


頭蓋外」は血液の異常、

脳以外の臓器の異常が原因で

あるもの。


抗てんかん薬の毎日投与を

始めるのは、原則、

○「血液検査上異常なし」かつ

○「12週に1回以上の発作

または、

○「血液検査上異常なし」かつ

○「重積・群発発作の既往あり

の場合,

と考えればいいでしょう。


考え方の根っこにあるのは、

原因が“脳にあるなし“に関わ

らず、発作が起きると、

「脳の傷は広がってしまう」

からそれは絶対避けなければ

いけない。

ただ、抗てんかん薬は

「飲まずに済むなら飲ませない」

と考えています。


「でこぼこな石ころだらけの道」

(発作の原因)を、車で走って

いると想像して下さい。


車は前後左右に大きく激しく

揺れています。

今、石ころが跳ね上がって

フロントガラスにぶつかり、

ビビが入りました。


経験のある方なら、分かると

思いますが、フロントガラス

のヒビを放置して、車に振動

を与え続けると、ヒビは

どんどん拡がっていき、

フロントガラスごと取り替え

なければいけなくなります。


「振動」がヒビを拡げる原因

ですから、ヒビを拡げない

ためにはエンジンを切って

「振動」を止めればいいんです。


傷は残ったとしても、

そこまでで済みます。


自宅の前が「でこぼこな石ころ

だらけの道」なら原因を取り

除くのは大変ですが(頭蓋内)、


旅先の「でこぼこな石ころだら

けの道」で起きたなら(頭蓋外)、

車の修理屋さんでヒビを補修

した後、ガラスが割れた原因、

つまり、ひどい石ころ道は2度

走らなければいいだけです。


発作の原因が脳にない、つまり

治療によって取り除ける、

「血液検査で発見出来るような

頭蓋外にある原因」がないか、

徹底して調べるべきです。


薬を処方するのは簡単です。

発作がきた

生涯「抗てんかん薬」を処方

病院の利益になる。


仮に、原因が、脳ではなく、

血液の異常による一時的なもの

だったとしても、

原因を突き止める努力を

しない場合、

ひょっとしたら、飲み続けな

くていい薬を飲み続け、

定期的に高額な検査を受け続

けなくてはならないかもしれ

ません。

てんかんの原因が、治療可能な

「脳以外の疾患」だった場合、

抗てんかん薬を飲み続ける

ことが、原因をマスクしてし

まう可能性だってあります。


発作制御のみに力を注いでし

まい、門脈シャントを見逃し

てしまうケースなどです。

勤務医時代に経験があります。

これは、例えれば、

「胃腸が弱いだけ」と思い込み

実は”乳糖不耐症”だとは知

らずに牛乳を飲み続け、下痢止

め薬を常用。そして、

なんとなく効いている気が

する」みたいなものです。


「心配だから、原因は何であれ、

抗てんかん薬は一生飲ませ

ます」というなら、

もちろんそれはかまいません。


「薬は飲ませるけど、原因を

突き止める為の検査で負担を

かけるのはかわいそうだから

検査はしません」もいいです。


飼主さんが納得していれば。


コロンボ動物病院では、

安易に抗てんかん薬の毎日

投与はさせません。


頭蓋内の原因が否定

できないペットであっても、

血液検査の結果から、

フードや生活習慣の改善を

おこない、

抗てんかん薬投与の必要が

ないレベルまで発作頻度を

減らせているケースもあり

ます。


抗てんかん薬の治療は、

薬からの離脱にも十分な

注意が必要です。

飲み忘れたり、

勝手に投与量を変えたりも

出来ない、つまり、

飲み始めたら、ずっと飲み

続けることがほとんどです。


薬代や血中薬物濃度検査代

の経済的負担、

毎日の投薬や「いつ発作が

来るかわからない」

精神的負担の大きさを考える

と、原因は可能な限り特定

出来ればと考えています。

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◎意味のない感染症検査

意味のない感染症検査、

それは、

生後6ヶ月未満でおこなう

「フィラリア抗原検査」

フィラリア抗原検査は、出来

れば7ヶ月以上で実施です。

もし感染してても、検査が早

すぎて、陽性反応は出ません

よ。

意味のない感染症検査・・

2つ目は・・と、すすめたい

ところですが、これ以降は、

アイデックスラボラトリース

という臨床検査会社がパンフ

レットに載せている検査につ

いての記述を要約して書きま

すので、飼主さんが判断して

下さい。

《ネコのエイズ・白血病検査》

1.猫免疫不全ウイルス(FIV)抗体

○ELISA法

・(−)陰性ならばFIVに感染

していないと考えられます

(抗体陰性)。

ただし、感染初期の場合もあ

りますので、暴露された可能

性がある場合は3〜4ヶ月後

の再検査をお勧めします.

・(+)陽性ならばFIVに感染

していると考えられます

(抗体陽性)。

ただし、生後6ヶ月以内の仔

猫の場合、移行抗体

の可能性がありますので、

6ヶ月齢以降に再検査

を行う必要があります。

以上、抜粋です。

※暴露とは、「エイズウイル

スに接触している可能性があ

る」という事。

「ネコが家に着たばかり」

は、来る前の素性が分からな

いのでこれに当たります。

※ELISAでは陰性・陽性に

関わらず、「家に来て3〜4

ヶ月経過していて、しかも、

6ヶ月齢以上でなければ、

猫エイズとは断定しない」

ということです。

もちろん、臨床症状が

猫エイズを裏付けている場合

は、総合的判断が必要です。

2.猫白血病ウイルス抗原

○ELISA法

・(−)陰性ならばFeLVに感

染していないと考えられます

(抗原陰性)。

ただし、感染初期・潜伏感染

・回復期の場合もありますの

で、暴露された可能性がある

場合は90日以降の再検査を

お勧めします。

・(+)陽性ならばFeLVに感

染していると考えられます

(抗原陽性)。

中には一過性で治るものもあ

るので、30〜60日の間に

再検査を行うか、あるいは

追加検査としてIFAを行い

本当に持続感染かどうかを

判定する必要があります。

以上、抜粋です。

※陰性なら90日以降の再検

が勧められ、陽性でも

30〜60日以降に再検査、

あるいは、別検査を追加して

判定する必要があるというこ

とです。

これらは、ひとつの臨床検査

センターの方針ですが、

当然、科学的根拠に基づいて

います。

飼主さんが、猫を飼おうとい

うときには、当然、知ってい

ていいことです。

家庭に新たな家族を迎えた時

「ついでに検査しますか?」

と言われても、

「まだ、家に来たばかりだし。

生後半年経ってないから、

6ヵ月齢でお願いします!」

仔猫を譲渡してもらうときも、

「検査は陰性みたいだけど、

まだ生後2ヶ月位だし、生後

半年でもう1回検査ですね」

と言えればスゴいと思います。

お金を払ってやる検査です。

”意味のある感染症検査”

を受けましょう!

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◎耳の病気の話(綿棒グリグリ)

2017年12月22日、

YAHOOニュースにこんな

記事がありました。

「子供の耳疾患 過去最多」

内容は、学校の健診で、耳

に疾患が見られる子どもの

割合が、2017年は過去最

多となったことが、文部科

学省の調査で分かったとい

うもの。

そのニュースの中で、日本

耳鼻咽喉科学会の話として

次のように書いてある。

「近年、耳あかが詰まる

"耳垢栓塞(じこうせんそく)"

が増えている。

"必要以上に耳掃除をすると、

かえって耳あかを奥に押し

込むこともあり、炎症を起

こすこともある"として、専

門医に相談するように呼び

かけている。」

外耳炎で来院するペット、

特に犬で、同じ問題が起きて

います。

原因は、綿棒や鉗子に綿花を

巻いたもので、耳掃除をする

ことにあると考えています。

耳の入り口から見て、目で見

える耳あかだけ、やさしく綿

棒でぬぐう、

あるいは、耳鏡で見ながら、

少しずつ掃除するなら問題あ

りません。

いけないのは、綿棒が真っ黒

になるまで、奥の方まで

グリグリやって、

「ほら、こんなに汚れてまし

たー!」ってやり方です。

先の丸いもので、いくら

グリグリやっても、きれいに

とれるわけありません。

カレーライスを食べるとき、

スプーンや手を使うのは、

カレーライスをおたまのよう

に掬える(すくえる)からで、

米粒ひとつ残さず食べられま

す。

もし「すりこぎ棒」のような

先の丸いもので食べたら、

米粒ひとつ残さず、きれいに

食べることなんて出来ません。

「耳が臭う」「耳をかゆがる」

といって来院する犬の耳を

耳鏡で見ると、耳掃除が原因

の場合はすぐ分かります。。

耳あかの溜まる場所が皆同じ

なんです。

下の写真を見て下さい。

mimimennbou

矢印の部分まではすごく

きれいですが、矢印より

奥は耳あかだらけ。

矢印より、向こうに押し

込んだように見えるんです。

実際には、L字型に曲がった

犬の耳には、矢印の部分まで

しか綿棒が届かないため、

とれない耳あかの土手が出来

てしまう。

盲目的に綿棒や鉗子に綿花を

巻いたもので「グリグリ」

するのは、ほとんどの場合、

"綿棒が真っ黒になって

やりきった感"を得られる

自己満足です。

もし、綿棒で奥まで

グリグリやって、耳を悪くし

ないのなら、

もともと、溜まるほど耳垢が

ないということです。

一度、見せてあげたいくらい

です。

健康な犬の耳・・

本当にきれいですよ。

鼓膜が薄いんです。

半透明で、細い血管が走って

います。

鼓膜の奥には中耳の耳小骨が

透けて見えます。

鼓膜まで続く耳道の皮膚は

"真珠の光沢"です。

おおげさに聞こえるかもしれ

ませんが本当です。

感動しますよ。

あれを一度見たら、耳の入口

が少し汚れていようと、

まったく気になりません。

あの感動的な美しさを持つ耳

「シャンプー液ジャブジャブ」

とか・・

「(実は凄く硬い)綿棒グリグリ」

とか・・

ありえません。

耳道がひどくただれて、強烈

な痛みを伴う急性の外耳炎は

「緑膿菌」の感染を伴う

難治性の外耳炎であることが

あります。

「緑膿菌」は、抗生物質への

耐性を容易に獲得する

メカニズムを持っている菌で、

薬に対する反応が極めて悪い。

でも実は、特別な菌ではなく、

普通にいる菌。

"耳に傷をつけなければ"

悪さはしないんです。

急性の外耳炎は、教科書的

にも耳掃除やシャンプー後に

起こると言われています。

悪くなっていない耳なら、

いじり過ぎないことです。

ただ、アレルギー、

原発性・続発性の脂漏症など、

脂漏を伴う場合は、耳だけで

なく、全身管理が必要な場合

がありますし、

腫瘍や難治性の外耳炎によっ

て、外科的処置が必要な場合

もあります。

また、耳道をきれいにするた

めに、麻酔下での処置が行わ

れる場合もあり、

今は耳科専門をうたう病院も

あります。

現在は、ペットの病気に関す

る情報がネット上に溢れてお

り、

さながら、「一億総獣医」の

様相を呈しています。

多くの情報を得るのはいいの

ですが、情報を過信して、

耳を悪化させる前に、

是非一度、来院して欲しいと

思います。

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◎もう3年毎でいいです!ワクチンの話

コロンボ動物病院では、現在

犬・猫の混合ワクチンの接種

を「3年に1回」にしていま

す。適当に言っているのでは

なく、世界小動物獣医師会の

ワクチネーションガイドライ

ンに沿った接種をすることに

決めたからです。

このガイドラインでは、ワク

チンを最も重要なコアワクチ

ンと、そうでないノンコアワ

クチンに分け、それぞれに接

種基準を提唱しています。

犬・猫ともに生後、1歳3ヶ

月くらいまでに生ワクチンを

4回接種すれば、その後つま

り1歳齢の次のワクチンは4

歳でよいということです。

様々な研究の結果、コアワク

チンで獲得する病気に対する

抵抗力は最低3年間は確実に

維持するから、それより短い

間隔で接種しなくてよい。と

ガイドラインに記載されてい

ます。

実はこの「コアワクチンで」

というのが味噌なのですが、

日本ではこのコアワクチンの

みからなる製品が数年前製造

中止になって以来、販売され

ていません。今では、このコ

アワクチンにノンコアワクチ

ンの、パラインフルエンザワ

クチンを加えた5種がコアワ

クチンを全て含む製品としては

最小単位です。

パラインフルエンザワクチン

は、コアワクチンとは違い、

「疾病の発生状況に応じて、

1年毎の接種が推奨される」

ワクチンです。

しかも、パラインフルエンザ

だけのワクチンは販売されて

いません。

そのため、日本では、

パラインフルエンザワクチン

を毎年接種しようとすると、

自動的にコアワクチンが付い

てきます。そして、

「パラインフルエンザだけの

ワクチンがないんだから、5

種以上を毎年接種するしかな

いですよ」という話になる。

ほっほ〜っ。そういう事なん

ですね。

でもね、パラインフルエンザ、

犬が沢山いるところにいかな

かったら、まず、うつりませ

んよ。人がどんな所でインフ

ルエンザに感染するか、考え

れば分かることです。

しかも、今は、どの薬屋さん

もワクチンは品薄な状態。

自分が欲しいワクチンを頼ん

でも、すぐには手に入りませ

ん。

メーカーが出荷調整をしてい

るんだそうです。

ほんとに、なんのこっちゃい、

という話です。

混合ワクチンは接種が義務付

けられている訳ではありませ

んが、サロンやドックラン、

ホテルでは、毎年接種してい

ないと利用出来ないケースが

ほとんどです。

防疫上止むを得ないと思いま

すが、簡単なことです。

皆が、「いっせーのーせっ!」

で3年に1回にしちゃえば

いいんです。パラインフルエ

ンザワクチン作っちゃえばい

いんです。・・しないけど。

猫のワクチン、生ワクチンは

市場の流通悪いですよー。

どっかにたっぷりあるんです

かね。

ただ、生ワクチンの接種につ

いては、反対している人もい

ます。病原性復帰の問題です。

生ワクチンは免疫原性を残し

病原性を弱めたワクチンです。

簡単に言えば、体に抵抗力

(免疫)を作る力は強いけど、

病気にはならない注射用の

ウイルスです。

完全に死んだウイルスではな

いので、注射後体の中で突然

変異を起こし、病原性が戻っ

てしまう危険があるんです。

メーカーによっては、この理

由から敢えて、生ワクチンを

製造しないところもあります。

猫のワクチン接種では、犬と

違って、コアワクチンとされ

ているヘルペスウイルスと

カリシウイルスに対する、

ワクチネーションの効果につ

いて、完全ではないとされて

います。ウイルス株の多さが

原因のようです。人のインフ

ルエンザ用ワクチンの「香港

型うっても、ソ連型効かない

」みたいな感じでしょうか。

ただ、パルボウイルスは、生

後1年3ヶ月くらいまでに

生ワクチンを4回接種すると、

生涯、パルボウイルスには感

染しない程強力な免疫が得ら

れるということです。

あともうひとつ。今、犬用ワ

クチン接種によって得られた

抗体価測定用のキットが出回

ってますが、毎年なんて必要

ないんですよ。どうしても、

抗体価が気になる方は、以下

の場合のみ有効だと思います。

@生後14〜16週までに3回の

接種が済んだ2週間後に1回

→ワクチンに反応しない犬

(ノンレスポンダー)かどう

か調べる場合、A前回ワクチ

ン接種から3年経ったが、う

たないで済むものなら、うち

たくない場合。

正直、抗体価が、いつ「有効

レベル以下」に下がるのかは、

年単位の測定で分かるわけな

いので、意味がないと考えま

すが・・

「うたない」でいい程、高い

レベルの確認をしたい場合は

有効です。

当院のホームページから

WSAVAのワクチンプロトコ

ールガイドラインを見られる

ようにしてあります。

メニュー→混合ワクチン接種

からWSAVAのPDFへどう

ぞ。このような状況では飼主

さんが、ご自身で勉強され、

ワクチン接種を依頼していた

だくのが、一番いいと考えま

す。

是非ご一読下さい。

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◎フードってどうやって 選ぶ?

コロンボ動物病院を開院した

当初、飼主さんに言われた言

葉、

「先生、牛専門の先生なんで

すって?」

「はぁ、まぁ・・」

確かに、獣医になってから、

大動物診療に従事して、

日夜岩手の山の中、雪の中を

診療車で爆走していたのは間

違いない。

獣医は、「獣医学科、大動物

専攻」とか「小動物専攻」と

かはなく、

卒業後はどんな獣医職にもつ

ける。

私が、千葉に戻ってから勤務

した木更津市の犬猫病院は、

一日に50件、繁忙期なら100

件の患者さんが来院する病院

で、獣医は3〜4人だけ。そこ

で3年間、本当に様々なペッ

トの診療を”担当医”として

経験したので、「牛専門の・

・?」と言われても、

「はい」とは即答出来ない。

「はぁ、まぁ・・」となる。

体力的にも、精神的にもきつ

かったが、

牛の獣医として働いたことに

、後悔はこれっぽっちもない

。結果、離れることになった

が、獣医としての姿勢という

か、信念というか、そういう

ものを得られた、いつもガチ

ンコでぶつかった、いい仕事

だった。

岩手を離れる前、農家さん達

に「牛を病気にしないための

指導書」を作って渡すと約束

したが、結局作らなかった。

時間はあったし、途中まで作

った。でも、いなくなる人間

が、偉そうに自分のやり方を

ごり押しするより、

その後苦楽を共にする獣医と

いい関係を作ればいい。と思

い直した。

私の指導が、過去のものとな

るくらい、事故(病気のこと

)が出なくなるような良い指

導がされていればそれでよし

。本当にお世話になりました

今回は、牛の治療の方が、ペ

ットの治療より明らかに「進

んでいる」と思える2つの分

野の話です。

ひとつは「子牛の消化器疾患

」。つまり下痢。

1年365日、下痢の診察し

ていたと言っても過言ではな

い。

子牛が下痢をして消耗すると

、農家さんは即、損害を被る

。だから、子牛が下痢をしな

いようにするために本当に

「指導」をよく守ってくれる

のだが、それでも、下痢をな

くすことは不可能に近い。

子牛の場合、下痢をする原因

がほぼ食餌性で、母乳の質の

問題だからだ。

母牛の発情や、飼料、牧草の

影響で母乳の質が代わるため

、腸内細菌が対応できず、異

常発酵からの下痢をする。

「病原細菌性の下痢」などは

、ほとんどないので、乳酸発

酵を止めるための抗生物質と

活性炭の内服。

断乳により、発酵の原因とな

る母乳が体に入るの止め、

輸液により、アシドーシスの

改善をはかる。

輸液に耐えられないほどの貧

血時には輸血も行う。

これらが、迅速に行われるた

め、下痢は治癒に向かい、

農家さんの損害を最小にとど

める。

下痢を1日長引かせると、出

荷時の体重に影響するため、

1日でも早く治さなければな

らない。だから、農家さんは

下痢をさせる可能性があるこ

とは絶対にしない。

ところが、ペットの診療は少

し違う。

バックナンバー1に書いたの

で、今回はこのあたりにする

が、また、別の機会に詳しく

書きたいと思う。

「進んでいる」と思える2つ

目は飼料給与の知識だ。

とくに酪農家さん達の知識は

すごい。

その酪農家さんに飼料設計す

る獣医の知識はそれを上回っ

てすごい。

私には、その知識はなかった

ので、飼料設計は出来ないし

、したこともないが、

事故を起こすことなく、乳量

を増やし、乳脂肪を上げるに

はどうしたらいいか、常に考

えている。

餌の成分の過不足によって、

発生する病気も分かっている

ので、計算上では、病気の出

ない設計をすればよい事にな

るが、そこは、生き物。1頭

ごとに消化機能や健康状態が

異なる。

しかも、牛は、役畜。仕事を

している。乳を沢山出してい

ればいるほど、からだに強い

ストレスがかかる。

また、主食である牧草は天候

で、収穫時期で、肥料の質で

すぐに成分が変わってしまう。

飼料計算だけでは、牛の体調

は考慮されない。

牛の体調だけ考えても、飼料

の質の変化を考慮しないと

机上の空論、学者のたわ言に

なってしまう。

そこで、飼料が体のなかで、

どう代謝されているかを実際

に調べるために

「代謝プロファイルテスト」

というのが実施される。

血液検査・乳量と乳成分・便

の状態・ボディコンディショ

ンなどをすべて調べた上で、

現在給与中の餌が体にどうい

う影響を与え、どういうふう

に栄養として取り込まれてい

るかを判断する。

ここから、一番生産性が上が

って、事故の起きにくい飼料

の混ぜ方を決定する。

では、それを踏まえて、話を

ペットフードに切り替える。

皆さんは、ペットフードを選

ぶときに、何を基準に考えま

すか?

値段と量、原材料に何を使っ

ているか、添加剤は不使用か

、それとも、「獣医師推奨!

」「数十種類のオーガニック

な原材料」といったうたい文

句か。    

ペットは飼主さんの家族の一

員だから、何を基準に選ぶか

は、飼主さんが決めればいい

と思います。

だって、だれも、人の家の食

卓に並ぶメニューにケチつけ

ないでしょう。

もし、飼主さんに「フードは

何を与えたらいいですか?」

と聞かれたら、「元気なら、

飼主さんが与えたいフードを

与えたらいいですよ」

と答えます。ただし、診療で

病気が見つかったペットに食

事指導をする場合は、

「まず血液検査を受けて下さ

い。フードを変えてから1ヶ

月目に再検査です」

と話します。

飼主さんの反応は様々です。

腑に落ちない顔をされる方も

います。

「腎臓悪いんだから、腎臓用

のフードでいいじゃない」

「肝臓悪いんだから、肝臓用

のフードでいいじゃない」

「尿石症なんだから、尿石用

のフードでいいじゃない」

注意しなければいけないのは

、処方食は一般的な総合栄養

食ではないということです。

もっと分かりやすくいえば、

処方食は「成分がおかしい」

フードです。

例として、先にあげた3つの

フードについてお話します。

@腎臓用のフード

腎臓用のフードの特徴は、一

般的に 

1.低蛋白・高脂肪・高炭水

化物 

2.低ナトリウム、低リン 

3.体をアルカリ化するとい

ったところですが、特に問題

になるのが、@の高脂肪です

腎不全には、腎臓そのものが

ダメになっている腎性の腎不

全の他に、腎臓に血液が通常

どおり運ばれないために、体

内の毒素を出し切れない「腎

前性の腎不全」というのがあ

ります。

○脱水で循環血液量が減って

いる、

○心臓病で心臓のポンプが正

常に血液を送り出せない、

○それと、すい炎(膵炎)で

す。

膵炎では、膵臓の炎症から波

及して起こった腹膜炎のため

、膵臓のある腹腔内に血液中

の水分が引き込まれるため、

血管内が脱水し、血液検査を

すると、「腎臓の数値が軽度

から中程度に高い」結果が出

ます。血管内が脱水し、腎臓

に通常量の血液が流れないこ

とによる「腎前性の腎不全」

なのですが、これを見落とす

と・・・

「腎臓の値が高いね。年齢も

高齢だから、腎臓用のフード

にしましょう」ということ

になる。

もし、腎不全の原因に”膵炎

”が絡んでいると、腎臓用処

方食の高脂肪がとたんに膵炎

を悪化させる。

膵炎で一番与えてはいけない

のは、脂肪です。

急性膵炎では、急死の原因に

、慢性膵炎では、長期的な食

欲不振や消化器症状の原因に

なりかねません。

A肝臓用のフード

肝臓用のフードの特徴は、一

般的に

1.低蛋白・中〜高脂肪・高

炭水化物

といったところですが、

肝臓用フードが全ての肝疾患

の適応になっていないのが味

噌です。

肝臓用フードには「肝性脳症

に対応」、と書いてあります

。肝性脳症とは、肝臓の「解

毒作用やアンモニアを尿素に

変える回路」が機能せず、

体中に毒素がまわってしまう

症状です。

なかでも、体内では強力な毒

として働く、アンモニアは、

タンパク質が分解されて出て

くる残りカスなので、

肝臓用フードは”低蛋白”に

作られています。

ここで注意が必要なのが、

本来、肝臓は、十分量のタン

パク質を必要とすることです

。血中アンモニアや総胆汁酸

を測定せずに、

「肝臓が悪いね」といって、

肝臓サポートやL/Dをすすめ

る獣医は、まずいないと思い

ますが、現在は、スーパーで

処方食が買える時代です。

もし、血液検査で、アルブミ

ンの低値、尿素窒素の低値を

伴わない肝臓の一般的な生化

学検査値の軽度上昇、ALP、

GGTの上昇があったペットに

肝臓用フード(肝性脳症適応

)を与えてしまうと、肝臓の

数値の悪化が「脂肪肝」や

「胆道系疾患」だった場合に

は、

○短期的にはフードの中〜高

脂肪が胆道系疾患や脂肪肝を

憎悪させ、  特に胆道系疾

患では、胆汁性腹膜炎など急

性で重篤な状態になり得ます

○中長期的にはフードの低蛋

白が、肝臓の蛋白不足による

障害を助長しかねません。

肝臓の数値が悪化している原

因として、肝臓そのものに原

因がない場合もあります

「うっ血性心不全」です。

うっ血性心不全では、腎臓の

数値の正常〜軽度上昇と、肝

酵素(ALT、AST)の高値を示

します。

心臓病の存在に気づかず、

「肝臓用フード」を与えても

意味がありません。

B尿石用のフード

尿石用のフードの特徴は、一

般的に

1.低蛋白・高脂肪・高炭水

化物食

(猫用は蛋白要求量が高いの

で、餌により低蛋白でないこ

ともある)

2.尿を酸性化するフードが

多い。

といったところですが、

一番の問題は、いったんフー

ドが処方されると、「病院で

尿検査をしなくなる」事。

先に書いたように、尿を酸性

化するように作られたフード

なんです。

尿を酸性化して、溶解出来る

のは、ストルバイト(リン酸アン

モニウムマグネシウム結晶)だけです。

シュウ酸カルシウムはph

(酸アルカリの指数)にかか

わらず、作られますが、

基本は酸性が好きな結石です

実際、処方食スタート後、定

期的に尿検査したペットで

ストルバイトは消えたが、今

度はシュウ酸カルシウムが出

現していたため、

尿石用の処方食から、もっと

マイルドな日常のケア食に

フードを切り替えたことが何

度もあります。

もちろん、処方食以外の食生

活、例えば、おやつやトッピ

ングなどが悪く働いた可能性

は否定できません。

例えば「さつまいも」のおや

つとか・・シュウ酸カルシウ

ム出ますよ。

もし、シュウ酸カルシウム結

石を放置したら、

待っているのは腎結石や尿管

結石、手術適応の膀胱結石で

す。

オスで尿道閉塞すれば、救急

で一刻の猶予もない「おおご

と」になります。

元気なペットならば

”オーガニック”・・いいで

しょう。なんらかの病気を抱

えたペットでも”スーパーで

処方食購入”・・いいでしょ

う。

でも、危険と隣り合わせであ

ることも肝に銘じて下さい。

スーパーやネットで売ってい

るのは、消費者からすればあ

りがたいことですが、危険性

はおおっぴらには謳いません

。申し訳程度に”獣医師の指

導の下、与えて下さい”と書

かれているだけです。

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◎今この時期にかゆい!

かゆい!なんでだろう?

近年、犬の純血志向により、

遺伝性と思われるアレルギ

ー、いわゆるアトピー性皮

膚炎が増加しています。

アトピー性皮膚炎と併発し

ていることが多いとされる

「食物アレルギー」は

アレルギー検査によって検

出可能で、処方食がピタッ

とマッチして、うまくコン

トロール出来ると、かゆみ

や皮膚症状を劇的に軽減で

きると実感しています。

言ってみれば、飼主さんの

「決まったものしか与えな

い!」という忍耐、それこ

そがペットをかゆみから開

放する鍵なんです。

ただ、アトピー性皮膚炎は

アレルギー検査をもってし

ても、原因アレルゲンの特

定や、アレルゲンの生活か

らの排除がとても難しい。

ハウスダストに対するアト

ピーは、アトピー性皮膚炎

の中でも、季節を問わない

ため、最もコントロールが

難しい。

これはヤケヒョウヒダニ、

コナヒョウヒダニといった

チリダニの体を構成する

タンパク質に対して起こる

アレルギー反応だ。

これらのダニは、畳、じゅ

うたん、布団、ソファーとい

った、生活になくてはならな

い住環境やインテリアに住み

着き無数に増殖する。

よく間違える方が多いが、け

っして噛み付いたりしない

(あれはツメダニという別物)

「うちは布団を毎日干してい

るから大丈夫!」という人が

いるが、仮に日光消毒でチリ

ダニが死んでも、その布団に

残った死骸のタンパク質に対

してアレルギー反応は起こっ

てしまいます。

エビアレルギーの人は、ゆで

たエビを食べてもアレルギー

を起こすんですよ。

アレルゲンが「生きている、

死んでいる、加熱した、して

ない」は関係ないんです。

ハウスダストに対するアトピ

ーがあるときは、治療は2通

りです。

@対症療法・・

まず、投薬と環境からのアレ

ルゲンの排除です。例えば、

じゅうたんは全部捨てる、

布団をたたく・上げ下げする

時はペットを近づけない、

ペットを人の寝室に入れない

、ダイソンの掃除機でまめに

掃除する、空気清浄機を一日

中回して空気をきれいにする

など・・の環境対策。

対症療法もうひとつは、

ステロイドに代表される抗炎

症剤を用いて炎症をコントロ

ールする方法。

アトピー治療2つ目のもうひ

とつは、減感作療法。

これは、アレルゲンが特定で

きた場合に、抗原液(アレル

ゲンが沢山入った液)を段階

的に濃度を上げながら、体内

に入れる方法。

即時型のアレルギーを起こす

免疫(抗体)が働く前に、アレ

ルギーを起こさない免疫(抗

体)に働いてもらうようにす

る方法。

例えて言うなら、「おっかな

い警視庁の捜査1科」が出て

くる前に「やさしい交番のお

まわりさん」に働いてもらう

といった感じでしょうか。

いずれにせよ、この2つの方

法しかありません。

前置きが長くなりましたが、

今回取り上げたいのは、この

話ではありません。

アレルギー検査で「ハウスダ

スト」が陰性判定だったのに

、「コントロール出来ないア

トピーがある」と感じている

、という話です。

それは、「柴犬」のアレルギ

ー性皮膚炎です。

柴犬に実施するアレルギー検

査では、あまり目立った陽性

反応が出ないように思います

。仮に陽性反応が出た食材を

回避しても、皮膚炎やかゆみ

はコントロール出来ません。

花粉やカビといった環境抗原

にも、あまり強い反応を示し

ません。

にもかかわらず、春から秋に

かけた長い期間、腹部、後肢

の内側、お尻の毛が薄くなっ

て黒ずみ、食物アレルギーが

陰性にもかかわらず、好発部

位の口や目をかゆがる。

とても治療に苦慮します。

今、一番怪しいと思っている

のは、「イネ科」の植物です。

日本の固有種である柴犬は、

稲作文化の根付いた日本で、

長い間、イネ科植物に囲まれ

た生活を送ってきた筈です。

イネ科植物に絞ってさらに検

査項目を増やしてくれたら、

何か突破口があるのではない

かと感じています。

IgE検査においても、日本

固有の植物やイネ科植物がも

っと充実し、欲を言えば、安

全な皮内テストやプリックテ

ストが開発されることを切に

願っています。

日本の獣医皮膚科診療におい

ては、検査結果に基づかない

、科学的根拠に乏しい高価な

フードを薦める事や、かゆみ

だけをブロックする高価な薬

にかまけて”思考停止”する

ことなく、アレルゲン特定に

むけた検査の研究が進めばい

いと思います。

ところで、「夏や秋は皮膚の

状態が良かったのに、ちょっ

と前からかゆがる」犬猫がこ

こ1ヶ月で4頭ほど来院しま

した。皆、皮膚用の処方食や

いつもと変わらぬエサを与え

、おやつもあげません。

夏に悪化していないのなら、

ハウスダストやエアコンのカ

ビは考えづらい。

(ハウスダストのアトピーは

夏と冬に2回ピークがきます

が、ちょっと早い・・)

秋の雑草も終わった今、なぜ

だろう?

皆さんに共通していたのは、

「冬用の布団を最近出した」

でした。

冬用の布団は、皆さん恐らく

5月位に、しまうのではない

でしょうか。

晴れた日に、めいっぱい天日

に干してから。

何かの花粉がたくさんくっつ

いていそうですよね。

心当たりのある方は、布団を

サイクロン式の掃除機で何回

も掃除した後、布団カバーを

2重・3重にしてみて下さい。

何か変わるかもしれません。

アレルゲンが特定できない、

特定できても、完全には排除

できないのだから、

やってみるしかないんです。

是非試してみてください。    

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◎老犬・老猫・・冬に気をつ

けること

夏の暑さは年老いたペットの

体に強い影響を与えますが冬

はさらに注意が必要です

特に心臓の機能が弱ったペッ

ト(投薬中はなおさら)、腎

機能が弱ったペットにとって

は危険な季節です。

冬の寒さと乾燥が血行動態に

さまざまな変化をもたらすか

らです。

病状を悪化させないためのポ

イントは3つ

@寒いだろうと暖めすぎない

こと(脱水させないために)

A水分補給に努めること

(脱水させないために)

B出来るだけ、加湿し、室温

を18度程度の一定に保つ

(呼気で水分を喪失させない

、寒さで血管を縮めない)

※ペットヒーター、こたつ、

ホットカーペットは特に危険。

脱水を悪化させるし、脱水し

ている動物を急激に温めると

死ぬことあり。

全てに共通しているキーワー

ドは 「脱水」 です。

老ペットは腎臓の機能が弱っ

ているため、体の中に水を保

持することが難しくなってい

ます。 ”多尿”です。

”多尿”は普通、代償される

(不足をおぎなう)ために

”多飲”を伴います。

ところが、動物は、気温が下

がるとピタッと水を飲まなく

なります。

恐らく気温と体温の維持の観

点からだと考えています。

「暑ければ体を冷やし、寒け

れば(手足が冷たければ)体

を冷やさないようにする」。

他に原因として考えられるの

は、

・血圧の上昇が渇欲(のど乾

 いた!)を低下させる。

・血圧を感知する血管のセン

 サー(首や心臓にある)が

 反応しない。

などいくつかあります。いず

れにせよ、体の中の水分はど

んどん奪われ補給されません。

○循環血液量が減れば・・・

 腎性の腎不全に加えて、腎

 前性の腎不全も起こします

 ので血液中の尿素窒素の値

 は急上昇【尿毒症】するこ

 とがあります。

○循環血液量が減れば・・・

 @体は、血圧を上げて、心

 臓や脳、あるいは腎臓など

 の臓器へ血液供給を保つた

 め頑張ります。

 結果、心臓の仕事量が増え、

 維持できていた心臓病が、

 とたんに維持できなくなり、

 いわゆる ”心不全”を起

 こします。

 A心臓病のペットでも、@

 とはまったく逆に、体が血

 圧を上げられないケースも

 あります。

・利尿剤の量が冬の病状に合

 わせて調整されてない場合

・トラセミドという利尿剤を

 投与している場合、

 です。

トラセミドは体から水分を排

出することで、心臓の仕事量

を減らしますが、”血圧を上

げるルート”を 遮断する強

い効果ももっています。

体の状態に合わせて薬用量を

調整しないと、心不全(ここ

では左心のうっ血兆候のこと

=肺水腫)を起こせないほど、

血管内はカラカラに干上がり、

重度の腎前性腎不全(血中尿

素窒素の上昇)を起こします。

これらを未然に防ぐには・・

@毎日、体重、呼吸数を測定

 する(家で出来ること)

※水分の過剰な喪失(腎不全

 危険信号)、あるいは蓄積

 (肺水腫などうっ血の危険

 信号)は体重をみるのが、

 最も簡単です。本当は毎

 日血圧測定したいが、ペ

 ットの場合、安定した血

 圧を計るまでに、落ち着か

 せるための時間が必要で、

 人間のように簡単に測定出

 来るものではない。)

A夏よりも頻繁に病院で血液

 検査を行う(心臓病・腎臓

 病のペット)

※血液検査で、腎不全だけで

 なく、心臓のうっ血の兆候

 も検出出来ます。(ただし、

 定期的な血検査査が必要)

@の体重の増加・減少は獣医

師に報告して、指示を仰ぎま

しょう。

呼吸数は個体差ありますが、

安静時犬20〜25回/分位、

猫安静時30回位です。

安静時とは、寝ているときで

す。そのペットごとの健康時

の平均呼吸数を計っておきま

しょう。

呼吸数の増加は、心疾患の悪

化を示すことがあるので、毎

日行い、異常あれば獣医師に

相談すること。

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◎もうやめませんか、

   愛情=おやつ

嘔吐・下痢が原因で来院する

ペットのほとんどが「人の食

べ物を与えた」「おやつを与

えた」という主食以外を口に

したことによるトラブルです

。現在は室内飼いのペットが

多く、飼主さんと過ごす時間

が増えたため「おやつを要求

して吠える」「自分だけ食べ

るのはかわいそう」「あの目

で見られると・・・」などの

理由で飼主さんが、我慢でき

ずに、必要以上のおやつを与

えることが増えています。

困ったことに、おやつを与え

て、ペットが主食を食べない

と、「何か食べないと弱って

しまう」「低血糖を起こす」

「かわいそう・・」

と言って、スーパーに食べそ

うなおやつを買いに走ったり

、ひとの食事を与えたり。ペ

ットだって、お腹がいっぱい

なら食べないし、胃もたれし

てれば、「今日はもう食べた

くないな・・・」と思いま

すよ。

「主食はイヤ」→

「おやつは食べる」→

「食欲低下」→

「おやつなら食べる」→

「嘔吐・下痢」

この段階で、食生活を改善す

れば大きな問題にはなりませ

ん。人だって、毎日同じ固さ

や、同じ色の便が出るわけでは

ないでしょう?

問題はその先です。ペットの体

が、食生活に反応して黄色信号

を発しているのに

「主食はイヤ」→

「おやつは食べる」→

「食欲低下」→

「おやつなら食べる」→

急性膵炎

とか、・・

「主食はイヤ」→

「おやつは食べる」→

「食欲低下」→

「おやつなら食べる」→

高脂血症

命に関わる問題に発展します

業界は、手を変え品を変え、

新しいおやつ作りに精を出し

、あげく、「栄養学のプロ」

と称する人たちが「安全な

おやつ!」と銘打って販売を

始める始末・・

重病が潜んでいない、単純な

嘔吐・下痢は適切な治療1回

と給餌・給水指導で再診の必

要がないケースがほとんどで

す。点滴に何日も通う必要は

基本的にはありません。

下痢をしたときに日常的に生

菌製剤(ビオ○○○などの乳

酸菌製剤)を止瀉薬として内

服させるのもどうかと思いま

す。生菌製剤は整腸剤で止瀉

薬とは違います。

生菌製剤が必要な消化器疾患

は多くありません。

生菌製剤が腸内でどう働くか

、そのメカニズムを考えれば

分かることです。

ペットに負担を与えない給餌

方法と、治療でペットを食餌

性の消化器疾患から解放しま

しょう。

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